オレンジのR+ //
2007.02.26 [Mon] + Music +
回文と蟹とエッシャーとバッハ

 *先にモーツアルトの回文的かつ逆行可能なカノンからどうぞ♪


■蟹のカノン

名著「ゲーデルエッシャーバッハ (ダグラス・R・ホフスタッター)」の中に、バッハの「2声の逆行カノン」の話がでてきます。

crab score


これは、2声の一方の音符を逆向きに読んだものが、ちょうど他方の旋律と同じにものなっています。つまり、前回のモーツアルトの回文的かつ逆行可能なカノンは上下逆にすると回文になりましたが、今度はこの楽譜を裏から透かして見たものが同じ譜面になっています。ト音記号と、曲のタイトル"CRUB CANON"も鏡像になってるのがわかります。曲も前のものに比べ格調が高く、バッハがフリードリッヒ大王が主題として8小節を与えられると直ちに完成させてしまったというエピソードから、あらためてバッハの才能の凄さを感じます。


 ♪蟹のカノンを聴いてみる♪


crab image

       >> M・Cエッシャー『蟹のカノン』<<


■アキレスと亀の会話
 
「ゲーデルエッシャーバッハ」の、この蟹のカノンが紹介されている章では、楽譜とともに、「アキレスと亀の会話」が語られているのですが、これがかなりスゴイ!!!!!!
百聞は一見にしかず、とにかく読んでみるべし。


「ゲーデルエッシャーバッハ」より
 亀   :いい日だな、アキ公。
アキレス:まったくだ。

亀   :いいところであったよ。
アキレス:ぼくもそう思ったところさ。
亀   :それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
アキレス:ほんとかい?歩くのが何よりいいらしいな。
亀   :ところできみは近頃ずいぶん溌剌としてるじゃないか、ほんとに。
アキレス:嬉しいことをいってくれるね。
亀   :そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?
アキレス:君も俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?
亀   :同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの画家、M・Cエッシャーの『蟹のカノン』、このあいだとある画廊でやっと見たよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかしぼくとしてはバッハのほうがエッシャーより上だという気がいつもするんだ。
アキレス:どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくの趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]
亀   :どんなふうなんだい、きみの年頃というのは?ぜんぜん悩みごとがないというのは本当かい?

アキレス:正確に言えば、杞憂(きゆう)がないね。

亀   :同じものだと思うがね。
アキレス:それも庭訓(ていきん)ならの話だが、たいへんな違いさ。
亀   :おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
アキレス:ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、要らんギターにさわるなんてのは!
(突然蟹がどこからかともなく現れ、片方のやや飛び出した黒い目を指さして、興奮しながらやってくる)
蟹   :やあ、やあ!どうしているね?元気かい?見えるだろう、このこぶ、この腫れあがり?怒りん坊にちょうだいしたんだ。ふん!こんないい日だってのに。ぶらぶら公園を歩いててさ、イラン生まれのばかでかい男によじのぼったんだ-大熊みたいなやつでね-リュートを奏でてるじゃないか。身の丈3メートルの大男よ、いやまったく。こいつのところにすたこら行って、大空めがけてよじのぼり、やっと膝小僧を叩いて言ってみた。「失礼ながら、だんな、そのリュートの曲はマズルカでしたっけ、マズイナでしたっけ?」ところが、ああ!やつはユーモアのセンスがないときた-これっぽっちもありゃしない-そしてガツン!-やつはおれさまをふり払い、目に一撃くらわせやがるじゃないか!おれさまの性格がそうなら何蟹かまわずカニャローッと怒るところだが、そこはわが種族の由緒ある伝統、おれは後退りした。要するにわれわれは前進するとき後退する。それがわれわれの遺伝子さね、ぐるぐるぐるぐるまわるわけだ。それで思い出した-いつも考えているんだがね、「どっちが先にきたのか-蟹か、遺伝子か?」つまり「どっちがあとからきたのか-遺伝子か蟹か?」おれはいつも、ものごとをぐるぐるまわしてみるんだよ。それがわれわれの遺伝子だな、要するに。われわれは、後退するとき前進する。おっとっとっ!そろそろ行かなくちゃな-なんせこんないい日よりだ。蟹の人生をたたえて歌ってくれん蟹(かに)!ターター!オーレー
(現れたときと同じに突然姿をくらます)

亀   :ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、イラン・ギターにさわるなんてのは!
アキレス:おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
亀   :それも提琴(ていきん)ならの話だが、たいへんな違いさ。
アキレス:同じものだと思うがね。
亀   :正確に言えば、弓(きゆう)がないね。
アキレス:どんなふうなんだい、きみの年頃というのは?ぜんぜん悩みごとがないというのは本当かい?
亀   :どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくの趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]

アキレス:同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの作曲家、J・Sバッハの『蟹のカノン』、このあいだとあるコンサートでやっと聴いたよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかしぼくとしてはエッシャーのほうがバッハより上だという気がいつもするんだ。

亀   :君も俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?

アキレス:そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?

亀   :嬉しいことをいってくれるね。
アキレス:ところできみは近頃ずいぶん溌剌としてるじゃないか、ほんとに。
亀   :ほんとかい?歩くのが何よりいいらしいな。
アキレス:それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
亀   :ぼくもそう思ったところさ。
アキレス:いいところであったよ。
亀   :まったくだ。
アキレス:いい日だな、亀公。



いかが??
蟹の登場を境に、会話の前半と後半は、亀とアキレス、バッハとエッシャーを入れ替えた双対的なものになっているのがポイント。著者によると、『アキレスと亀は、彼らが知っている芸術作品の説明をしているが、全く偶然に、それらの作品の構造は彼らが交わしている対話と全く同じ構造である。(中略)また、蟹はある生物学的構造の説明をしているが、それも同じ性質をもっている(以下略)』とのことです。


それにしてもすごすぎて何も言えない。。





// no tags

| 23:58 | trackback 0* | comment 0* |


<<☆Gifted Child ② | TOP | モーツアルトの回文的かつ逆行可能なカノン>>

comment











管理人のみ閲覧OK


trackback

trackback_url
http://labellavitaet.blog40.fc2.com/tb.php/179-b38f9de1

| TOP |


07 ≪│2017/08│≫ 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -



Author:kotomo

【twitter】 _kotomo
【tumblr】 kotomo note*モバイル版


  *   *   *


             >> more?
track feed track feed ??????????

kotomo < > Reload

全タイトルを表示