オレンジのR+ //
2017.04.30 [Sun] + Art/Design +
「花*Flower*華―琳派から現代へ―」@山種美術館

ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当に良い所があると思った。花の美しさを見つけたのは、人間だし、花を愛するのも人間だもの。(太宰治)



「花*Flower*華―琳派から現代へ―」@山種美術館へ。
日本には美しい四季があり、いにしえより詩歌に文学にとその美しさを語り愛でてきました。
ならばその美を描き取ろうと画家たちが筆をとるのは当然の事ではないかと。



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*今回は一点・渡辺省亭《牡丹に蝶図》を除き全て山種美術館所蔵作品です
*主催者の許可を得て、撮影しております




展覧会は、わかりやすく【春】【夏】【秋】【冬】の4つの章で構成されています。
まずはゆっくり、【春】の世界へ。



【春】

春、芽生えの季節。春の花と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、なんといっても桜でしょう。窓の外ではすっかり葉桜となってしまったけれど、山種美術館ではまだまだ静かに咲き誇っていました。


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横山大観《山桜》1934

あざやかな桜色を見かけ、近づいてみると大観の《山桜》でした。花と葉を同時につける山桜には、ソメイヨシノとはまた違う趣がありますが、実は山桜の花の色は「白い」のです。けれど葉が赤いので、遠目には綺麗なピンク色に見える。この《山桜》もまさにそれで、ぱっと見では色づいた花に、近づいて気づくその白さ。先へ先へと伸びる枝にも山桜らしい力強さが感じられます。


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渡辺省亭《桜に雀》20世紀

一般には忘れられかけていたものの、最近飛躍的に注目度があがっている省亭。初めてヨーロッパに渡った日本画家でもあります。この絵を見て、まだ咲き始めた桜の下でまだ散るはずもない花を降らせてくれるのは、蜜を吸いに来た雀やめじろたちだったことを思い出しました。この桜も山桜でしょうか。写実的に描かれた雀の子らの楽しそうなさえずりがいまにも聞こえてきそうで。


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奥村土牛《木蓮》1948

木蓮といえば、わたしの中では春を教えてくれる花のひとつ。その大ぶりな花とは対照的に葉はちいさく、いっそう花の美しさが引き立ちます。すこし厚ぼったい花弁の質感がよく表現されていて、その優美なフォルムとしっとりした色合いは、春の花々の中でも目を引きました。



【夏】

夏になると、葉はその濃さを増し、花の色もいっそう鮮やかに。


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結城素明《躑躅百合》1930

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速水御舟《和蘭陀菊図》1931

《和蘭陀菊図》は御舟がヨーロッパに行った翌年に描かれたもので、その影響からか、シンプルでありながらもモダンな印象を受けます。上に大きくとられた余白が密に描かれた菊とのコントラストを生み出し、それがとても心地よく。すくっとまっすぐに立つ姿に夏花らしい生命力が伺えます。


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山口華楊《芍薬》1976

花びらの透けるような表現、薄暗い背景。どこにも水滴は描かれていないけれど、雨上がりの光景が浮かびました。蒸れた土の匂いが立ち込める中、青さと勢いを取り戻す葉。息を吹き返す花たち。この作品が持つフレッシュさがそんな風に雨後を想像させたのかもしれません。



【秋】

にぎやかで華々しい夏を越え、日に日に近づく冬が感じられるこの季節。観る者のこころにもすこしの余白が生まれるからでしょうか、花々の表情にも穏やかさや憂いが感じられるのです。


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木村武山《秋色》20世紀

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酒井抱一《秋草図》19世紀

色のトーンも夏のそれとはガラッとかわり、ススキに月、あるいは蜻蛉と、日本人のこころを打つ情緒的な表現が連なります。絵の奥行きがそのまま余韻となって残りました。どちらの作品も好きですが、やはり抱一のバランス感覚は素晴らしいですね。


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酒井抱一《菊小禽図》19世紀

おなじく抱一作。とても目を引きました。
小禽とは小鳥のことで、ここで描かれているのはルリビタキです。くっきりとした菊の艶やかさ、葉のたらしこみ、ルリビタキをのせてたわむ茎が生み出す逆くの字の余白。すべてが絶妙で。
これは12ヶ月セットのうちの一幅だそうで、機会があれば他の月を見てみたいなぁ。


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速水御舟《桔梗》1934

晩年に水墨表現を極めようとした御舟。ひとつの画面の中で水墨と着色を意識的に使い分けていて、墨とミントグリーンのコントラストが爽やかな秋の空気を感じさせます。根元の消えゆくような描き方にも惹かれました。



【冬】

そうして季節は花も眠る冬へと、また廻る春の気配を待ちわびて。


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小茂田青樹《水仙》1919

雪の中でも咲くことから「雪中花」の異名を持つ水仙。画面は葉で覆われ、水仙も下を向き、つけられた陰影からなんとも寂しげな、ともすればおどろおどろしい雰囲気にも思えますが、このような陰影をつけるスタイルは大正期の絵の典型なんだそうです。


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酒井抱一《月梅図》19世紀
*この作品のみ、一般の方も撮影可となっています

春を先駆けて咲く梅の花。桜のように満開を楽しむのではなく、一輪、また一輪と、開いてゆく花を数えてゆく楽しみがあります。その枝ぶりの妙も梅ならではの魅力の一つ。その美しさを抱一は筆の運びでこう描くのか…と。ぜひ間近で味わってほしいもの。
わたしの印象ではもっと月が大きかったように思えたのですが、それだけ梅を照らす月の存在が印象的だったのかもしれません。



【花のユートピア】

展示には四季折々の花が描きこまれた作品もありました。異なる季節の花がひとつの情景として咲き誇るという、現実にはありえない光景は、まさに【花のユートピア】。絵の中にだけ存在する千紫万紅な世界です。


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田能村直入《百花》(部分)1869

画家によれば、国に命じられた100種の花卉図を制作するために描いた巻子とのこと。それぞれの花の特徴が細かく正確に捉えられています。画面を埋めつくさんばかりの花々の表現は、中国の清朝でかなり流行したスタイルなんだそうです。まさに百花繚乱、眼福でした。


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鈴木其一《四季花鳥図》19世紀

ほぼ正方形の二曲一双という琳派ならではのフォーマット。右には春と夏、左には秋と冬と、四季がひとつの屏風に中に描かれいます。平面的なべったりとした塗りに幾何学的な構造はどこかグラフィックデザインを思わせ、その現代的な感覚には毎度驚かされます。これぞ其一の真骨頂。



第二展示室は牡丹のみを集めた空間になっていました。
その中でもとくに惹かれた作品を。


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鈴木其一《牡丹図》1851

百花王と称され、見事な大輪の花をつける牡丹ですが、ここには真正面から捉えられているものはなく、横をむいて咲くものあり、花弁を散らすものあり。単にピークの一瞬を切り取るのではなく、それぞれに表情があって、なんとも惹かれました。ああ、この牡丹は生きているんだなあ、と。



   *   *   *


山種美術館の春恒例、花をテーマにした展覧会。
今年も変わらず素晴らしく、花々に囲まれてたいへん心が満たされました。

なぜ人が花に惹かれるのかはわからない。
けれど、観た者の中にその花は咲き続けるのだと気づく、鼻歌まじりの帰り道なのです。



 >> 「花*Flower*華―琳派から現代へ―」
 会期: 2017年4月22日(土) ~ 6月18日(日)
 会場: 山種美術館
 主催: 山種美術館、朝日新聞社
 開館時間: 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
 休館日: 月曜日

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