オレンジのR+ //
2013.03.12 [Tue] + どこかの誰かのオハナシ +
title: 青い鳥

季節はいつだったか憶えていない。単に忘れてしまったのか、そもそもそこに書かれていなかったのか。


「僕」はいつもどおり学校の後に裏山で遊んでいた。いつもと違ったのは、茂みの中にちいさな青いものを見つけたこと。近寄ってみると、それは大きな木の根元に横たわった、一羽の青い鳥。しばらく息をひそめて見守っていたが、ぴくりとも動かない。もっともそんな風に確かめることはせずとも一目見て死んでいることはわかっていたが、そのキラキラを陽をうけ輝く青色の羽根は死からもっとも遠いもののようにも思えて不思議と恐怖は感じなかった。そのやわらかそうな体。いまは固くとじられているまぶたの奥にある、黒黒としたつぶらな瞳さえ容易に想像することができた。変な風にねじれて縮こまったままの足だけが唯一その鳥の死を語るものだった。

ためしにそっと胸元へ手をのばしてみる。指先をくすぐる感触はここちよいほどだった。風をふくみ、一瞬虹色の輝きをみせる羽毛。今度はちいさな頭を撫でてみる。そうするとなんだか気持ちよさそうに目をつぶっているようにも見えて、けれど二度とチイとも鳴くことのない小鳥を僕はそのまま放おっておくことができなかった。ポケットからティッシュをとりだして注意深く小鳥を包むと、鞄の中にしまった。ちいさな青い宝石を僕が、僕だけが見つけたんだと嬉しさでいっぱいだった。家に帰ると誰にも見つからないように机の奥に宝物をしまった。それから何度もこっそり引き出しをあけてはその青の美しさにうっとりし、その羽根をなでてあげた。

そんな僕だけの秘密もあっけなく暴かれる。家族が「異臭がする」と騒ぎ出し、すぐにそれは僕の机のひきだしからだと突き止められてしまう。僕の抵抗もむなしく開けられた宝箱の蓋。見つけた母は悲鳴をあげ、姉はきもちわるいと泣き出し、祖母は南無阿弥陀仏と手をあわせ、僕はただうつむいた。

ただ、父だけは違った。「ほう」と言って注意深くティッシュをひろげて、そんなもの早く捨ててきてと喚く母を尻目に憐れな青い鳥をじっと見つめた。しばらくしてから顔をあげると、「お前がつかまえたのか」と尋ねてきた。「ちがう、見つけたときにはもう死んでた。綺麗だからひろってきた」「そうか。このままじゃ可哀想だから庭に埋めてあげなさい」、そうして呟くように「この鳥は◯◯◯◯◯だな」。



tumblr_mb4in7G4HO1qd.jpg
[via]


「大問4.文章を読み、以下の設問に答えよ」。

話との出会い方としては、少々変わったものだったかもしれない。けれどわたしにとって青い鳥をみるとまっさきに思い出すのはこの話で、幸福の象徴である青い鳥ではない。あらすじもうろ覚えで、上にある話はわたしが勝手に肉付けして仕上げたもので、その話の結末も、その鳥の名前も知らない。そもそもその問題文に結末まで記載されていたかもわからない。それがひとつの物語だったのかも、たんに現代文の長文読解ように書かれた文章だったのかさえも。


けれど、これがわたしにとって、いちばんの青い鳥。

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