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2012.09.17 [Mon] + Days +
言葉の海と記憶

ひさしぶりのダウンで、時間感覚があやふやになるほどこんこんと眠りつづけていた。

体調不良のお約束である悪夢をみるでもなく、眠りについた一瞬からつぎの目覚めまで記憶がとぶわけでもなく、ただ眠りながら「眠ること」をしていた……そんな感じ。いうなれば、なにも映らない・なにも語らないブラックスクリーンをただながめていたというかーーーそれは夢と呼べるのだろうか?

すこし汗ばんだ布団に横になるだけでふわふわと頼りなく浮遊する身体はそのまま水面を漂う自身を連想させ、熱さでぼんやりする頭とは裏腹に、耳元で涼しげに響く波音を想像した。そうしていつしかベッドは大きな波間へと。無意識に数えていた自分の呼吸も聞こえなくなった頃、ふたたび深い眠りへと堕ちていった。





静寂。





water_sky.jpg
[image source]



辞書は、言葉の海を渡る舟だ」。ーーだからおれたちは海を渡るにふさわしい舟を編む、とはとある小説の登場人物の言葉だ。ならば今この身を預けているのも言葉の海なのだろうか、などと先日読んだばかりの物語に思考がひっぱられていく。

三浦しをん『舟を編む』。辞書編集部という舞台設定もドンピシャで好みだった。予想外なほどたくさんのこころに響く言葉たちと出会うことができたわたしにとって、熱の中で再びその登場人物たちの言葉に耳を傾けることは「眠る」傍らのできごととして悪くない。


 ーーー食べて、泣いて、笑って、恋をして。 ただ少し人より言葉の海で遊ぶのがすき。

 ーーーだれかの情熱に、情熱で応えること。

 ーーー言葉の持つ力。傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、だれかとつながりあうための力に自覚的になってから、自分の心を探り、周囲のひとの気持ちや考えを注意深く汲み取ろうとするようになった。

 ーーーたくさんの言葉を、可能なかぎり正確に集めることは、歪みの少ない鏡を手に入れることだ。歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差しだしたとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる。一緒に鏡を覗きこんで、笑ったり泣いたり怒ったりできる。

 ーーー人間関係がうまくいくか不安で、辞書をちゃんと編纂できるのか不安で、だからこそ必死であがく。言葉ではなかなか伝わらない、通じあえないことに焦れて、だけど結局は、心に映した不器用な言葉を、勇気をもって差しだすほかない。相手が受け止めてくれるよう願って。



文章を目で追いながら読んでいたときとは違い、今度は最初からそれぞれのシーンや言葉、表情が映像として再生されてゆく。それがまたおもしろかったし、いっそう全てのやりとりに妙なリアルさが加わった。


そして物語はわたしのいちばん好きなシーンへ。辞書の編集者としてはピカイチでも、言葉ヲタクであり変わり者として一般には敬遠されがちな主人公・馬締(まじめ)。その妻であり(誰もが奇跡だといって憚らない!)、確かな腕と職人気質を持ち合わせた美人板前・家具矢(かぐや)の、こんな言葉だ。


 ーーー料理の感想に、複雑な言葉は必要ありません。『おいしい』の一言や、召し上がったときの表情だけで、私たち板前は報われたと感じるのです。でも、修行のためには言葉が必要です。

 ーーー私は十代から板前修業の道に入りましたが、馬締と会ってようやく、言葉の重要性に気付きました。馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです。香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです。

 ーーーおいしい料理を食べたとき、いかに味を言語化して記憶しておけるか。板前にとって大事な能力とは、そういうことなのだと、辞書づくりに没頭する馬締を見て気づかされました。




そうなのかもしれない。

いつも何に触れるたび、つたない言葉でもそれがわたしにどう映ったか、再生され記憶されたか、すぐ伝えずにはいられなかったのはいつまでも憶えておきたかったからなんだ。そしてそれはたしかにいまも色褪せることなくこころの一番やわらかいところに在る。目をとじて、そこに浮かんだものを伝えていきたい。そう想っているよ。


願わくばこの夢を見終えてまた目覚めるとき、熱がひいてますように。

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