オレンジのR+ //
2011.10.11 [Tue] + Art/Design +
世界遺産 ヴェネツィア展 3 ピエトロ・ロンギと仮面の人物

さて、会場も半ばを過ぎた頃、多くの仮面をつけた人物が登場する、なんとも奇妙でおもしろい作品群と出会うだろう。それらの多くははたったひとりの画家の絵描く風俗風刺を積極的に取り入れ模倣していったものに過ぎない。当時、その啓蒙的な視点による風俗画としての世界観はヴェネツィアのみならず当時の欧州の中でも特筆に値する。ーーーピエトロ・ロンギである。


■ ピエトロ・ロンギ Pietro Longhi
18世紀ヴェネツィアで活躍した風俗画家。ヴェネツィアを中心とする当時の貴族社会や生活、労働者たちを鋭い観察眼で見つめ、優雅で穏やかな描写の中に軽妙な風刺を織り交ぜながら風俗画として表現。画業の初期には宗教画や歴史画、大規模な装飾画なども手がけていたが、1735年頃から風俗画も手がけだし、1740年代初頭には小画面構成による独自の風俗画様式を確立した。
[Salvastyle > ピエトロ・ロンギ]




■ ヴェネツィアの仮面(マスケラ)

ヴェネツィアに仮面といったら、世界三大カーニバルのひとつ、ヴェネツィアのカーニバル!このカーニバルは「謝肉祭」と訳されるもので、復活祭前の一週間に行われる断食期間「四旬節」の前に催されたもの。カソリックの世界では広く知られた行事だった。

しかしことヴェネツィアにおいて、いつしか人々は仮面とマントで素性を隠すようになり、身分や貧富の差を超えたお祭り騒ぎの風習へと化していく。やがて人々はカーニバル以外の祭りや、賭博場と社交場を兼ねた《リドット》、はては年がら年中遊びに行くときには仮面をつけるようになっていった。


Pietro_Longhi_Perfume_Seller.jpg
《香水売り》 1756
ヴェネツィアの仮面と聞いて連想される、豪華な刺繍や装飾が施された仮面はあくまでも祝祭の仮装用。日常では作品中の人物がつけている二種類の仮面、顔の上半分を隠す白い仮面《バウタ》と顔の真ん中に小さくつける黒い仮面《モレッタ》が用いられていた。



ーーーと、ここまでが一般的なヴェネツィアの仮面に関する知識。
しかし、ここでさらに一歩踏み込むと、また知られざるヴェネツィアのもうひとつの顔が見えてくる。


ルネサンス以降の黄金時代、ヴェネツィアがもっとも警戒したのは外国勢力による介入だった。政府は至るところへスパイを放って人々を監視し、また貴族階級の男性に外国人との接触を禁ずるなど、懸命に現政治体制の存続をはかった。今回出展されている《真実の口》という、一見おどろおどろしい大理石製密告用投書箱は、そうした背景から生まれたものだ。

さて、外国と手を結んで政府転覆を企てるのではないかと疑われた一般貴族たちは、しっかり対抗手段を講じた。仮面と黒マントだった!
マントに関しては、富をひけらかしすぎないよう上からのお達しが元々の始まりとされれうが、一度着用するとその便利さは何者にも代えがたい。衣服が身分をあらわす社会、ましてヴェネツィアのように人口が少なく、貴族同士はたいてい知り合いとなれば、仮面とマントは完璧な隠れ蓑になる。それに気づいた政府が何度も禁止令を出しては空文化されてしまうという繰り返しの末、ついにカーニバル・シーズンだけは許可されるが、18世紀にはそれもなし崩しとなり、普段から仮面を付けるものもーーー当然ほとんどが貴族たちだーーーがあらわれてきた。
[図録/水の都 中野京子]



つまり、仮面や黒マントの仮装は、単にカーニバルを盛り上げるためのいち小道具としてだけではなく、当時絶対的な権力を誇った議会政府への反発であり、皮肉めいた意味合いをも込められていたのである。(この、仮面を禁止する政府と仮面をつける貴族との一進一退の攻防戦はなかなかのものだったらしい)

ヴェネツィアには「Ti conosco mascherina」という言葉がある。直訳すると「お前の仮面は判っている」であり、『そっちの下心はみえすいているんだよ』という意味なのだが、どんだけ~。(さぞや仮面の下で、色んなかけひきが行われていたのだろう)。

そんな裏エピソードを知ると、仮面の人物を多用したロンギの風刺画がいっそうピリリとした皮肉めいているもののように思えてくるから不思議 ←ザ☆単純人間 part2



■ 凝縮された画面構成

ロンギといえば、風刺の効いた小画面作品がとても魅力的。その小さな画面に人物を密に配置することで、それぞれのキャラクターが引き立ち、それが画面全体に奇妙なリズムとアンバランス感を与えている。加えて登場する、仮面の登場が絶妙なアクセントとなり、観る者をその世界観へといざなう。

その凝縮された画面構成にはこだわりがあったようで、ロンギはしばしば同じような構図の作品を描いている。


たとえば。


exhibition-of-a-rhinoceros-1.jpg
《Exhibition of a rhinoceros at Venice》 1751

Pietro_Longhi_1751_Rhino.jpg
《Clara the Rhinoceros》 1751


といった具合に。



実は、《香水売り》にも似たような構図の作品が存在する。


Pietro_Longhi_coffee_house.jpg
《Masked Figures in a Venetian Coffee House》


pietro_longhi_The_Charlatan.jpg
《The Charlatan》 1757

3-il-ridotto-Pietro-Longhi.jpg
《Il Ridotto》 1740

2-il-ridotto-Pietro-Longhi.jpg
《The Ridotto》 1757-60

1-il-ridotto-Pietro-Longhi.jpg
《The Ridotto》 1757-60


どうやらこの、一人がもう一人を後ろから覗き込むような人物の配置がお気に入りだったみたい(?)。こうして比べてみると、前面の人物が婦人であるか仮面をつけた人物であるで、だいぶ受ける印象が変わってくるからおもしろい。

ちなみに仮面をつけている場合、美しいドレスを着ているからといって、その人物が女性であるとは限らない。この時代、あえて女装をしたうえで仮面をつける事を愉しむといった行為も流行したとかしないとか。

この《香水売り》の二人の人物も、果たして?・・・



-------- キ --- リ --- ト --- リ --------



とまあ、長々とヴェネツィア展で気になった作品について書いてみました。
個人的にはピエトロ・ロンギの作品をみることができてよかったです。
なかなか日本で目にする機会は少ないので。

ヴェネツィア展まだ行ってないよーという方は、是非是非!
「第3章 美の殿堂」だけでもかなり見応えがありますよん☆


こちらのブログ記事もご参考に。

 >> 弐代目・青い日記帳 「ヴェネツィア展」



関連リンク
 >> 魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産ヴェネツィア展公式ページ
 >> ヴェネツィアのカーニバルの写真、画像集【仮装・仮面舞踏会】 - NAVERまとめ:美しいですのう。
 >> ヴェネツィア共和国の歴史 - wikipedia:ヴェネツィア共和国の誕生から滅亡までを解説
 >> wikipedia - Pietro Longhi
 >> RE+nessance - ピエトロ・ロンギ Pietro Longhi
 >> remove - ピエトロ・ロンギ流 After Pietro Longhi & Pietro Longhi Style

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とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

2013/09/19 10:20 | 履歴書の添え状 [ 編集 ]


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「ヴェネツィア展」
江戸東京博物館で開催中の 「魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産 ヴェネツィア展」に行って来ました。 ヴェネツィア展公式サイト http://www.go-venezia.com/ 「世界遺産「ヴェネツィア」の黄金期から爛熟期まで、至極の芸術作品が前例のない規模で日本上陸。」なん... //弐代目・青い日記帳  2011/10/11 23:08

ピエトロ・ロンギ流 After Pietro Longhi & Pietro Longhi Style
僕、今日はSAIの二番煎じ。記事がピエトロ・ロンギの二番煎じか!ではなく・・・。楓のナティエの記事に、ナティエの模倣や模写を記事にしてたのを真似た。僕もAfter SAI というところだ。記事 Jean-Marc Nattier style ジャン=マルク・ナティエ スタイル ピエトロ・ロン... //remove 2011/10/12 21:49

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