オレンジのR+ //
2011.09.28 [Wed] + Art/Design +
世界遺産 ヴェネツィア展 1

ヴェネツィアといえば、もう何度も訪れているほど大好きな街。
というわけで、はりきって行ってまいりました、「魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産 ヴェネツィア展」@江戸東京博物館
以下、こころに残ったものを思いつくままに。


まず、迎えてくれたのは、背に大きな羽を持つ獅子。
ヴィットーレ・カルパッチョの《サン・マルコのライオン》です。


leonedeisanm.jpg


ヴェネツィアの街を歩けばいたるところで見かけるこの有翼のライオンは、ヴェネツィアの守護聖人マルコの象徴であり、共和国のシンボルです。手にした書物に刻まれているのは、「PAX TIBI MARCE EVANGELISTA MEVS (我が福音書記者マルコよ、汝に平安を)」。生前マルコがヴェネツィアに立ち寄った時、現れた天使から受けた予言の言葉だとか。

サン・マルコのライオンは、その勇ましい姿から、ともすると近づきたい印象を抱いていたけど、このカルパッチョのライオンには素直にこころ惹かれました。

そう思わせたのは鮮やかな色を持つ美しい羽根か、
それとも勇ましいながらもやさしさを湛えた表情か。



■ ティンレット(1519-1594)と彼の工房 《天国》

ParadisoTintorettoIREintero.jpg


これはドゥカーレ宮殿の大評議会の間にあるティントレットの《天国》の下絵なり。

1577年にドゥカーレ宮殿が火災にあった際、バドヴァの画家グァリエントが14世紀に描いた大フレスコ画が回復不能なまでに損傷し、それを描き直す画家を選出するコンクールが行われた。ティントレットは、ヴェロネーゼ、フランチェスコ・バッサーノ、フェデリコ・ズッカリらとともに、そのコンクールに参加したが上首尾にいかず、結局仕事を得ることができなかった。ところがバッサーノとともにコンクールに勝利したヴェロネーゼの死後、その仕事がティントレットに回ってきたのだ。(図録より)


共和国時代、総督の住居兼政庁であったドゥカーレ宮殿の大広間の王座上方を飾る新たな壁画。ティントレットならずとも、腕に覚えがある画家なら、誰でも喉から手が出るほど欲しかった仕事にちがいない。コンクールで負け、一度はのがしたものと諦めていた世紀の大仕事のチャンスが、再び自分の手元に巡ってきた喜びとはどれほどのものだったのかなどと想像しながら見るのも楽しい。


ここで、見事コンクールを勝ち取ったヴェロネーゼやバッサーノの原案をみてみると

ヴェロネーゼ作
a0091348_563117.jpg

フランチェスコ・バッサーノ作
a0091348_57555.jpg

本来ならば、ヴェロネーゼとバッサーノの共作が大広間を飾るはずだったわけだけれど、こうして二人の原案を比べてみると、それぞれに主張があり、互いの意見を取り入れつつひとつに絵に仕上げていくのは容易ではなかったのでは…と思ってしまう。
実際、どうだったんだろう?


一方、現在ルーヴル美術館にある、コンクールのために制作されたティントレットの原案というのがこれ。詩人ダンテの『神曲』に着想を得て、同心円上に聖なる人々を配した天国の様子を描いたもの。

Tintoretto CAT13Louvre-2

こちらが今回出展されている、ティントレットの天国の下絵。最初の図案とくらべると、画面中央下部の球体と、画面上部のキリストとマリアの上部の渦巻きの部分に若干の変更が見られる。ほぼこの図案で確定かな?

ParadisoTintorettoIREintero.jpg


ドゥカーレ宮殿で実物を見たときはあまりにもその大きさに圧倒されてしまい(なんと縦7m、横20m、世界最大級!)、絵そのものの印象が薄いというのが正直な感想。なので、今回お手軽サイズ(?)でじっくり見ることができてよかったです。



■ ジェンティーレ・ベッリーニ 《総督ジョヴァンニ・モチェニーゴの肖像》

_dogeGM.jpg


総督の肖像は何点かあったのですが、評判どおり、とりわけ美しいと感じた作品です。やわらかな線、あかるい色づかい、気品漂う表情。その人となりが、色となり、光となって、絵から溢れてくるようでした。

ところで。
総督(ドージェ)とは、ヴェネツィア共和国の元首のこと。任期は通常終身であり、有力貴族の年配者が選ばれることが多く、初期の総督は独裁的な権力を持っていました。しかし世襲制による共和制崩壊の危機から、選挙で決定されるようになります。この選挙のやり方がちょっとユニーク。

「ドゥカーレ宮殿」では、独特の政治システムが作られていた。
宮殿の中に広さ1300平方mの部屋がある。ここに1000人以上の商人が集まった。ベネチアは王や君主をいただいたことは一度もない。一貫性として商人たちによる共和制をとっていた。壁には歴代の総督たちの肖像が飾られている。総督は、商人たちの間から、選挙で選ばれた。選挙では談合や陰謀を排除するための仕組みが作られた。まず1000人以上の貴族の中から抽選で30人選び、再度抽選し9人とし、その9人が投票して40人を選出し、ということを10段階繰り返して、最後に一人の総督を選び出す。「抽選」という偶然の要素を組み込んで、選挙の意図的な操作を不可能にした。例え総督に選ばれても、守るべき規則は100項目以上もあった。…
[テレビ番組「世界遺産への招待状 スペシャル版 ベネチア」]


つまり、総督になるためには、人望だけではなく、強運も持ちあわせていなければならないというわけ。もっとも、総督は毎年海との結婚の儀式を取り交わすわけだから、海の神からも選ばれなければならないんだ・・・。(神様にだって相手を選ぶ権利があるんだよ説)

そんな事を考えながら鑑賞していると、ますます神々しく、後光までさしているように感じられてくる不思議 ←ザ☆単純人間



-------- キ --- リ --- ト --- リ --------


余談ですが、ドゥカーレ宮殿の大評議会の間に並ぶ歴代総督の肖像画の中に、一人だけ肖像画の代わりに黒い幕が描かれた人物がいます。


ヴェネツィア共和国千年の歴史から『消された』総督。



―――第55代総督マリーノ・ファリエロ。



Mflag.jpg


1355年、マリーノ・ファリエロはクーデターを起こし、体制転覆・独裁を狙うも失敗、処刑。死後に四肢を切り刻まれた。また、他にいた10人の協力者は、処刑された後ドゥカーレ宮殿の外に吊された。
彼は記録抹殺刑に処せられたため、彼に関するものははすべて処分され、そこにあるべき肖像画を覆う黒幕にはただ、マリーノ・ファリエロという人物が罪を犯したため処刑された、とだけ。


そんなに不名誉なら額ごと外してしまえばいいのに、とも思ってしまうけれど、あえてマリーノの【場所】を設けて、黒幕をかけるという見せしめをするあたり、この時代のヴェネツィアらしいなあ、なんて。


 -------- キ --- リ --- ト --- リ --------



その2へつづく


関連リンク
 >> 魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産ヴェネツィア展公式ページ

// no tags

| 12:58 | trackback 1* | comment 2* |


<<世界遺産 ヴェネツィア展 2 《二人の貴婦人》と須賀敦子 | TOP | リハビリ>>

comment











管理人のみ閲覧OK


この記事を観て、すごく行きたくなりました。

僕は関西なので、京都での開催を来年の夏まで待たないといけないですが。笑

2011/09/28 17:47 | ウラジミル [ 編集 ]


>ウラジミルさん

はい、見応えのある展覧会なのでぜひぜひ!
目下、感動の余韻を文字起こし作業中です。

2011/09/28 18:54 | kotomo [ 編集 ]


trackback

trackback_url
http://labellavitaet.blog40.fc2.com/tb.php/1447-440e0830

「ヴェネツィア展」
江戸東京博物館で開催中の 「魅惑の芸術‐千年の都 世界遺産 ヴェネツィア展」に行って来ました。 ヴェネツィア展公式サイト http://www.go-venezia.com/ 「世界遺産「ヴェネツィア」の黄金期から爛熟期まで、至極の芸術作品が前例のない規模で日本上陸。」なん... //弐代目・青い日記帳  2011/09/28 21:05

| TOP |


03 ≪│2017/04│≫ 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -



Author:kotomo

【twitter】 _kotomo
【tumblr】 kotomo note*モバイル版


  *   *   *


             >> more?
track feed track feed ??????????

kotomo < > Reload

全タイトルを表示