オレンジのR+ //
2008.12.31 [Wed] + Days +
年年歳歳花相似たり

年の瀬はとくに生活リズムが狂いがちになり、
早朝には目が覚めていた。

なんとなく録りためていたレコーダーの録画リストを眺めながら、
適当に再生ボタンを押す。
それらをBGM代わりに、同じく溜め込んでいた雑誌の束に手を伸ばした。


どれくらいそんな時間を過ごしただろう。
ふと耳に飛び込んできたことばに顔をあげた。



「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」



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「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」書・婁正綱
[image source]



そのときテレビでは限界集落のドキュメントが流れていた。
一旦巻き戻すと、今度は本を置いて、じっと画面を見つめた。



「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」

この言葉が好きなんです、と
おばあちゃんは顔をしわくちゃにして笑った。



何年も前に夫を亡くしたおばあちゃんは、たった一人、
子らの同居の誘いを断ってなじみの山里の家で生活をしている。
そんなおばあちゃんのいまの生き甲斐は、桃の樹を植えること。
おじいちゃんが好きだと言っていた花だ。

最初は心の穴をまぎらわすため、
けれどいつからかそれは生きていく力を与えてくれた。
誰に頼まれたわけでもなく、そのうち道沿いにも樹を植えるようになった。
限界集落目前の町のこと、誰も文句をいうひとなどいない。

そして季節がめぐり、やがて桃の樹が花をつけ美しさを振り撒き始めた頃、
まわりの人々もおばあちゃんの植樹を手伝うようになる。
つながっていく、桃の道とみんなの想い。

そんなおばあちゃんの夢は、
メインロード沿いを桃の花でいっぱいにすること。
まだ夢が叶うまでにはもう少しかかりそう。


「今年もまた、花桃が咲く季節がやってきた」

「欲も得も 何も考えない、ただ 花がきれい、花がきれい」

「植えておけばまた誰かが見てくれるだろう」

「まだ 場所もいっぱいあるから、体が続けば(これからも)植えるねぇ」


それから一冊の本を取り出したおばあちゃん。
栞をはさんだページには、赤鉛筆で線が引かれていた。



「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」

この言葉が好きなんです、と
おばあちゃんは顔をしわくちゃにして笑った。
心底幸せそうに笑った。



図らずも大晦日の朝っぱらから
ポロポロと泣いてしまった。
おばあちゃんの手があまりに美しくて、
感動してしまったからだ。


ねんねんさいさいはなあいにたり、
さいさいねんねんひとおなじからず。


なんて美しいことばなんだろうと思った。



h 年年歳歳花相似たり歳歳年年人同じからず
(ねんねんさいさいはなあいにたり・さいさいねんねんひとおなじからず)

【意味】
毎年花は同じように美しく咲くが、
その花のもとに集える人も、人それぞれも、年々変わっていく。
悠久不変の自然に対して、年とともに老いていく人間のはかなさを詠ったもの。


これは、唐の劉廷芝が作った「白頭を悲しむ翁に代る」という長い詩の一節で、
詩の大意は以下とおり。

洛陽城東の桃の花は、飛び来り飛び去って誰の家に落ちるのか。洛陽の娘達はおのが顔色の移ろいを惜しみつつ、落花に行き逢って溜息をついている。今年の落花を見てわが顔色の移ろいを嘆いているが、明年また花が開くときに誰がこの世に永らえているだろうか。立派な松柏でも、年古れば切られて薪となり、桑畑もいつか変わって海となるというではないか。昔、洛陽城東で落花を嘆いた人はすでに亡く、今の人がまた落花の風を嘆いている。年ごとに花は同じでも、年ごとに見る人は変わる。いま全盛の若者達よ、この半死の白頭の翁を憐れんでほしい。この翁とて、昔は紅顔の美少年であった。公子王孫とともに花咲き匂う樹の下で、落花の前で清らかに歌い、軽やかに舞ったものだ。光禄大夫の池殿の錦を広げた宴や、将軍の邸の、神仙を描いた楼閣の宴にも出たものだ。それがひとたび病に臥してからはつきあう人もなく、春三月の行楽は誰のもとに去ったのか。美しい眉を誇れるのも幾時であろう。たちまち鶴のような白髪が糸のように乱れかかる。昔、若者達が歌舞した場所も、今は黄昏に鳥雀が悲しく鳴いているだけだ。



x ふたたび出逢う言葉


本棚を整理していたとき、
唐突に思い出した。

わたし、あのことばを知ってたわ!

すぐに確認をする。
間違いない、やっぱりそうだ。
あのときは心に留めておく程度だったけれど・・・


「年年歳歳花相似、(ねんねんさいさいはなあいにたり)
 歳歳年年人不同。(さいさいねんねんひとおなじからず)

 分かるか、太助?

 【As time gose by 】
 ・・・という意味だ。

 どうやら、お前とは本当の友情が生まれそうだ。」

 主人公キートンの父は犬(太助)に言った。


 ――― 浦沢直樹「MASTERキートン」より




"時の過ぎゆくままに"・・・


そっか、あのセリフだったのか。
いまやっと胸んなかに落ちてきたよ。



 >> 年年歳歳花相似たり---劉廷芝
 >> 『枯木再び花を生ず -禅語に学ぶ生き方-』(細川景一著・2000.11.禅文化研究所刊)より
 >> MASTERキートン全話紹介:どうやら第3巻 CHAPTER:5 「すべての人に花束を」だったみたい。太平&太助コンビが大活躍!

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