オレンジのR+ //
2008.10.25 [Sat] + Music +
チェロの巨匠パブロ・カザルスの『鳥の歌』

パブロ・ピカソ(1881 - 1973)とパブロ・カザルス(1876 - 1973)。
スペインに生まれ、同じ時代を生き抜いたパブロという名を持つ二人の天才は
絵画と音楽、分野は違えどとてもよく似ていると思う。
なによりも故郷を愛し、平和を願い、独裁政権への抗議を芸術をもって表現した。

わたしはこの二人の天才が好きだ。
だからもしあなたがパブロ・カザルスに興味を持ったのなら、とてもうれしい。


■ パブロ・カザルスという人生

チェロという楽器から無限の可能性を引き出した、天才音楽家パブロ・カザルス。
スペインのカタルーニャ地方に生まれ、11歳でチェロを始めた。バルセロナ市立音楽学校に入学後、当時ヴァイオリンに比べて演奏法が確立していなかったチェロの奏法を確立する。
また、それまで単なる練習曲と思われていたバッハの「無伴奏チェロ組曲」を再発掘し、現在の名曲の地位まで昇華させたのも彼である。
1936年にスペイン内戦が起こるとフランスのプラドに亡命する。しかし第二次世界大戦終結後の1945年、いまだフランコ将軍がスペインに独裁をしいていることに抗議して公開演奏活動を休止する。
カザルスは平和活動家としても有名で、終生音楽を通じて世界平和のため積極的に行動した。


■ 1971年10月24日 国連デー

公には出ずとも、「世界中の人びとが、幸福と、美を愛する心で結ばれて、一つの大きなコンサート会場にいるかのようにともに坐る日を待ち望んで」と、国連総会では演奏を披露していたカザルス。この日は彼にとって三度目となる国連コンサートだった。
カザルスはウ・タント事務総長から作曲を依頼されていた『国連賛歌』の指揮をつとめた後、とつぜん指揮台から降り出し、身動き一つせずに耳を傾けている聴衆に向かって静かに語りかけ始めた。


「もう長らく皆の前で演奏を披露していませんが、今日は演奏しようと思います。」―――



このときの様子を、チェリスト井上頼豊氏の『回想のカザルス』より引用する。 


……95歳直前の1971年10月24日が、カザルス最後の国際舞台になった「国連デー」記念コンサートである。いまだに語り草になっているこの公演は、豪華な出演者への期待もあり、国連総会参加の各国代表とその家族たちで、大会議場は超満員だった。
この日のためにカザルスが作曲したオーケストラと合唱のための《国際連合への賛歌》が初演され、ウ・タント事務総長がカザルスに国連平和メダルを贈った。つづいてスターンとシュナイダーによるバッハ《二つのヴァイオリンのための協奏曲》や、ホルショフスキー、ゼルキン、イストミン協演のバッハ《三台のピアノのための協奏曲》などのあと、もう一度《国連賛歌》が演奏されて、プログラムは終った。指揮台をおりたカザルスは、しずかに客席に話しかけた。
「私はもう十四年もチェロの公開演奏をしていませんが、今日は弾きたくなりました」
運ばれてきた愛用のチェロを手にとって、彼はいう。
「これから短いカタルーニャの民謡《鳥の歌》を弾きます。私の故郷のカタルーニャでは、鳥たちは平和(ピース)、平和(ピース)、平和(ピース)!と鳴きながら飛んでいるのです」
彼は右手を高く上げて、鳥が飛ぶように動かしながら、ピース、ピース!とくり返した。
「この曲はバッハやべートーヴェンや、すべての偉大な音楽家が愛したであろう音楽です。この曲は、私の故郷カタルーニヤの魂なのです」
静まり返った会場に流れた《鳥の歌》。その感動をことばで表現するのはむずかしい。強いていえば、巨匠の人生と思想がこの短い曲に凝縮されて、聴くものの心をゆさぶった、ということだろうか。全聴衆と演奏者が、そして世界に放映された録画に接した人たちが、同じように涙を流したのだった。……




演奏活動の傍らつねに世界平和を訴えつづけ、「自由な政府になるまでは絶対に祖国に帰らない」と宣言していたカザルス。あの歴史的コンサートから2年後の1973年、二度と故郷の地を踏むことのないまま、偉大なる天才音楽家の95年の生涯は幕を下ろしたのだった。


■ パブロ・カザルスの "El Cant dels Ocells(鳥の歌)"

当時、全世界にテレビ中継され、多くの人々が涙した貴重な音声が
スライド写真とともにネットに公開されています。

ぜひ観てください。
そして、聴いてみてください・・・『鳥の歌』を。

Casals "El Cant dels Ocells" at U.N. Day カザルス『鳥の歌』



「私は、カタルーニャの古い祝歌(キャロル)「鳥の歌」のメロディでコンサートをしめくくることにしています。その歌詞はキリスト降誕をうたっています。生命と人間にたいする敬虔な思いにみちた、じつに美しく心優しいことばで、生命をこよなく気高く表現しています。このカタルーニャの祝歌のなかで、みどりごを歌い迎えるのは鷹、雀、小夜啼鳥、そして小さなミソサザイです。鳥たちはみどりごを、甘い香りで大地をよろこばせる一輪の花にたとえて歌います。」

 ―――パブロ・カザルス


関連リンク
 >> パブロ・カザルス - wikipedia
 >> 13歳にしてサン=サーンスを感動させた「弓の王」カザルス
 >> TV Pauenca - Pau Casals a la ONU parla de Catalunya 1971[youtube]:カザルスのスピーチの動画
 >> Pablo Casals Documentary[youtube]:10分程度のドキュメンタリー。やっぱりカタルーニャ訛りの英語は分かりやすい。というかカタカナっぽい。

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